協働コーディネートを学ぶ③「フルコストリカバリーとは」
2021年10月21日(金)午後1時半より、 Zoomにて「協働コーディネートを学ぶ 第3回 フルコストリカバリーとは」を開催いたしました。
参加者は30名(行政職員5名、NPO法人等11名、中間支援センタースタッフ13名、その他1名)
はじめに、前回までのふりかえり、今回は協働の中での委託契約における様々な課題、特に委託契約の中の積算の考え方について学ぶことを確認。
《内容》協働におけるフルコスト回収のための積算基準共有の重要性
関西大学商学部教授/公認会計士 馬場英明 氏
はじめに 自己紹介
愛知県で長らくNPO、中間支援に関わる中で、
2007年「行政からNPOへの委託事業の積算に関する提言」(愛知県)の作成に関わる。
~ ボランティアやサークル的に活動していたNPOが、行政から委託を受けて事業を行うようになったものの、事業をやればやるほど苦しくなっていくという課題について、実務者会議を立ち上げ、「委託事業の積算」について、行政(NPO担当者)と話し合い、まとめたもの。
※行政とNPOが対等に協働するための協定「あいち協働ルールブック2004」に基づいた提言で、愛知県が2007年に公表したものの、積算自体の理解が進んでいないのが現状。
この提言の中で、①適正な人件費単価、②必要な経費科目、③団体を維持するための間接費 が積算されていないことが課題として挙げられている。
論点①人件費単価
委託事業としては、公共工事の工事請負、および清掃や警備等の業務委託が中心で、住民サービスに広く参画することが想定されていないため、そもそも積算の基準がない。
→NPOの専門性・ノウハウを活用した事業については、企業等との公平性を考慮しながら、事業の内容に見合った適正な人件費単価で積算することが必要である。
論点②管理費・ボランティア
事業を実施するために必要となる作業及び経費を適正に見積もり、過不足なく積算する必要がある。直接費のほか、間接費として、適切な管理費水準は30%程度。
論点③官民のイコール・フッティング
行政側が見ているのは事業予算のみだが、組織全体ではそれ以外にも様々な間接経費がかかっている。コスト節減は、事業費だけでなく、フルコスト全体を考慮して比較しないと、不公正(アンフェア)になる。
なぜフルコスト回収が必要か?
★継続性・・短期的にはボランティア・サークル的に活動できても、中長期的には組織体制を整備しないと続かない
★多様性・・異なる主体間でも対等・公正な契約条件を整えないと、特定の主体しか協働事業に関われなくなる。
★専門性・・責任をもって事業を遂行するためには、相応の専門性と管理体制が求められる。
まとめ
★短期的に事業ができるかどうかだけでなく、目的性・対等性・責任分担・持続性の観点から、
どのような協働事業にはフルコストが担保されるべきか、官民の相互理解を深める必要がある。
(群馬県「協働による地域づくりに関する指針」参照)
参考資料
l愛知県(2007)「行政からNPOへの委託事業の積算に関する提言」
https://www.aichinpo.jp/7_keisyo/wakugumi/kyoudoukaigi/sekisanteigen0710/sekisanteigenhakkou.html
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