協働コーディネートを学ぶ②協働コーディネーターとは
2021年9月10日(金)午後1時半より、
Zoomにて「協働コーディネートを学ぶ 第2回協働コーディネーターとは」を開催いたしました。
参加者は30名(行政3職員5名、NPO法人等11法人15名、中間支援センター6スタッフ11名、その他1名)
はじめに、前回(8月20日 第1回 協働と共創 本質を学ぶ)について振り返り
群馬県の場合、「協働5つの原則」に基づいて、協働事業を行っている。
今回は、先進的な取り組みを行っている横浜市に話を聞く。
横浜市は独自の定義を行い、条例のもとに「横浜市市民協働推進センター」を設置、協働コーディネーターを配置。群馬県でも参考にしていきたい。
《内容》
1. 協働コーディネーターが活躍するための環境整備とは 条例・契約のあり方 施策
講師:横浜市 市民局 協働推進課 係長 工藤 謙一氏
・はじめに 横浜市について
1889年~市制施行により横浜市誕生
人口:約378万人(R3年8月)(現在でも増加傾向)(基礎自治体としては日本一大きい)
①横浜市の協働の経緯、施策の位置づけ
高度経済成長期~1990年代 市民自身が身近な地域課題解決に取り組む機運の高まり
NPO等が公共的なサービスの一翼を担うまでに成長・発展
協働推進の指針、条例整備 市民活動と協働に関する基本方針「横浜コード」(平成11年)
市民活動推進条例(平成12年)
市民協働条例(平成24年)
→現在、協働は市の施策の大きな柱に
「市民協働推進センター」「地域福祉保健計画」「ヨコハマ市民まち普請事業」
また横浜市の政策や方針にも協働は重要な考え方として位置づけられ、社会の価値観の変化を象徴したキーワードの一つとして明記されている。
★中期4か年計画(2018~2021) 基本姿勢3 地域コミュニティの視点に立った課題解決
政策33「参加と協働による地域自治の支援」
★横浜市職員行動基準(令和3年4月改定)
「・・地域や社会の課題をともに解決するため、市民をはじめ多様な主体との協働・共創に取り組みます・・」の文言が追加、横浜市職員の頭に入れてあって当然のこととという認識。
★横浜市市民協働条例(平成25年4月施行)
目的:市民協働を進めるうえで必要となる横浜市や市民等の責務、踏まえておくべき基本的事項を定め、市民の活動や市民協働の環境を整備するとともに、市民の知恵や経験を市政に反映することにより協働型社会の形成を図ること
ポイント ・協働を担う「市民等」:NPO、企業、地縁団体、学校・・広く全ての「市民」
・市民協働事業の提案
・協働契約・・協働事業実施にあたっての契約締結
②横浜市の協働契約
★まず、協働事業の基本原則《横浜コード》
協働はそれ自体が目的ではなく、具体的な目標達成のための手法であるため、
「進め方」が重要。
そのための基本原則として、以下の協働の6原則を尊重することが重要。
・対等の原則
・自主性尊重の原則
・自立性尊重の原則
・相互理解の原則
・目的共有の原則
・公開の原則
★協働契約の契約形態・・事業の具体化にあたって適切に実施できる事業形態を検討する。
※契約書のひな型も公開している。
・委託型 ・・市が有していない専門性、柔軟性等が求められるような事業に有効
・補助型 ・・市民が主体となって行う事業について、市が公益上必要であると認めた場合に、
市が資金面(事業費)で協力する形態
・負担金型 ・・協働で行う公共公益的な事業について、経費を市(またはお互い)が
負担する形態
・共催型 ・・イベント等の実施にかかる企画・広報・実務において市民と市の両者の特性、
ネットワークを活かす事業に有効
※協働契約と委託の主な違い
・・双方が対等な立場のもと、企画立案から遂行までお互いの認識を出し合い、合意の上で進める。お互いに合意した内容を協働契約として明文化し、役割分担しながらより良い課題解決や市民サービスの実現を図っていくもの。
③協働契約の事例
・委託型 「ヨコハマ市民まち普請事業」
(NPO法人 市民セクターよこはま・横浜市住宅供給公社 都市整備局まちづくり課)
・補助型「広域大規模災害時における行政、社協、NPO等の連携体制構築」
(災害復興くらし応援・みんなのネットワークかながわ〔通称 みんかな〕
市民局市民協働推進課)
・負担金型「SDGsデザインセンター事業」
(共同事業者JV 温暖化対策統括本部SDGs未来都市推進課)
2. 協働コーディネーターの役割と具体的活動事例
講師:横浜市市民協働推進センター 統括責任者 チーフ協働コーディネーター 吉原明香氏
①「横浜市市民活動推進センター」~協働の未来をつくろう~(横浜市市庁舎1階)
センター機能の紹介
自分たちが住んでいるまちをよくしたい、活動したい、どこに相談したらいいんだろう・・
今まで相談先がなかった人たちのあついおもいを受け止める受け皿になっている、
総合相談窓口のようなところ。
②コーディネート実践例
H氏プロジェクト(4月~8月の経過)
H氏(税理士)より相談・・事務所の半分のスペースを地域開放、子育て支援につながれば
地域子育て支援拠点(NPO)に参画要請、意見交換。養護施設を卒業した子どもの支援している。
区社協に参画要請、意見交換
・・子どもが育つ上で、小さなころから地域のなりわい企業とつながれれば、、
中学校でキャリア教育プログラム行っているNPOに参画要請、意見交換。
近隣の私立の中学・高校の副校長、フリースクール運営してる先生に参画要請・意見交換。
・・発達障害や、学校にも家にも居場所がないと感じている子どもたちと、地域のなりわい企業をつなげられたら・・
→H氏(税理士)が、人材確保に困っている顧客の中小企業の経営者に声かけ、上記メンバーと意見交換(予定)
★ポイント:定例会議に持ち込むのが大事
③人材育成について
協働コーディネーターにふさわしい人材は、企業と協働の経験があるNPOリーダーなど。
現在センターでは、8人のコーディネーターが動いているが、「協働」について共通認識を持って進めるために、協働のイメージをビジュアルにして共有している
協働プロジェクトを進めるうえでのポイント
セミナー後半は、Zoomのブレークアウトルームを使い、5~6名でのグループで、講師の吉原氏・工藤氏の講義についてディスカッションを行いました。
印象に残ったこと、質問してみたいことを分かち合い、各グループでの発表となりました。
協働コーディネート、協働契約と委託契約の違い、横浜市の協働事業の事例について印象に残ったというコメントが多くありました。
資料のイラストデザインも印象的でした。
講師の 工藤謙一 氏によると、
横浜市では「協働」が条例で定められているため、行政に丸投げではなく、協働で納得できる事業となり、課題解決に効果を上げているとのことでした。
市が大変だからといったことで業務委託するのではなく、協働にすることで、より良く、ニーズのすり合わせができ、ミスマッチが起こりにくいといった効果を得られ、とても意味のあるものとなっているそうです。
「協働」「共創」がトレンドとなっているのもうなずけます。
講師の 吉原明香 氏は、
協働のコーディネートをする上で、数多くの企業や団体とつながりを持つことが重要であり、コーディネーターの育成・新人発掘にも力を入れているそうです。
NPOと企業のコーディネートは、結果を焦ってはならず、じっくり進めるためにステップを踏んで時間をかけることも必要とのことでした。
心の奥底にあるものを人との出会いから主体的に気づき、パートナーとして一緒にやっていきたいという気持ちの高まりがプロジェクトの成功につながるそうです。
NPOとして企業とのコラボにコツがあるとしたら、「営利」を拒否しないことがあげられるそうです。営業と思っても奥底には地域に役に立ちたいという気持ちが隠れていることがあり、そこに気づいてもらうことが必要です。
相手の文化にも合わせられるよう、努力も必要だと言えそうです。
無理だと思っていても、一段一段積み重ねていくと関係性が積み上がり通じていく。今はコロナでの危機感があるが、共有することで社会を変えていく原動力となり、チャンスの瞬間が訪れているのかもしれない。と講義を締めくくりました。
講義を聞き、横浜市の各セクターの方の熱心さに刺激を受けました。
私たちの活動にも「協働」「共創」を意識して取り組む必要があると感じました。
横浜市 協働についての参考資料(リンク)
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